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『​彗雨龍光』作品解説

<作品全体について>

この度はアルバム『彗雨龍光』をお聴きいただき、ありがとうございます。

数年前に、「水のアルバムを作ってください。」という依頼を頂戴したことがありました。 様々な構想を練ったものの、その時には作品、構成ともに十分なものが出来ず、結果お断りさせていただくことになりました。 その後もずっとそのテーマのことは頭にあったのですが、今年に入り”水”や”龍”をテーマにした様々なご縁が繋がり、また、当初は違ったコンセプトでのアルバム制作を進めていたところ、思いがけない様々な出来事が重なり、今回のこの「彗雨龍光」という水をテーマにしたアルバムを発表させていただくこととなりました。 宇宙を巡った水が、地球へとたどり着き、地上をめぐってやがて蒸発して空へ還ってゆく大きな循環が全体のモチーフになっています。

日本列島そのものが龍体と言われていたり、古来水と龍は密接な関係にあるものでした。

そういったことから、日本の古典文学や神話、各地に残っている伝承から着想を得て様々な形の水を表現しました。

​<CD版ジャケットについて>

CD版のジャケットの写真は琵琶湖で撮影しました。

撮影場所の緯度は北緯35度22分に位置し、富士山、伊吹山、琵琶湖の竹生島、元伊勢、大山、出雲大社が一直線上に並び、春分・秋分の日にはこのラインから日が昇り、日が沈みます。

ジャケット写真の撮影日は4月初めで少しずれていますが、伊吹山と竹生島から昇る朝日を背景に撮影しました。

琵琶湖には龍宮があると古くから伝承があり、さらに竹生島は龍が昇る場所という龍神伝説が残っていることから、この写真を選んだ次第です。

<楽曲解説>

01.天地未発

宇宙開闢の以前。 時間と空間が未だ生じていない世界。 そこから全てが生まれる、無限の+と無限の−とを含むゼロの領域。 古事記の冒頭の一文 天地初發之時ー天地初めて發けしときーから着想を得て、「天地未発」(読み;てんちみはつ)としました。

 

02.logos

新約聖書のヨハネによる福音書の冒頭の一文『はじめに言葉ありき』。 元となるギリシャ語での表現 ”En archē ēn ho logos”から引用し、曲のタイトルを“logos”としました。

 

03.水中-minaca-

かつてこの曲を私の師にお聞きいただいたとき、宇宙をめぐる水、たとえば約2億6000万年かけて太陽系が銀河系を一周する水の軌跡、そして、宇宙を巡って地球にやって来る水の旅、そういった視座をお話しいただいたことがありました。 また、古事記にも登場する神名の天之御中主神(アメノミナカヌシ)の御中とは、水の中の主とも言えるというお話も伺い、その時いただいたお話から、楽曲タイトルは水中-minaca-と致しました。

 

04光注ぐ丘 から、07.mikumari までの4曲は、西日本各地のお宮を参拝した際にできた曲を選びました。

 

04光注ぐ丘

壱岐島の丘の上にある神社に参拝した際にできた曲です。 お宮に光が注がれている光景がとても神聖で、宇宙から光が注いでいるように見え、光注ぐ丘というタイトルにしました。

05.空を渡る

福岡県の、海沿いにある神社に参拝した際にできた曲です。 参拝した日が快晴で境内に海から吹く風がとても心地良く、まるで風が自由に空を渡っているように感じたことから名づけました。

 

06.請雨 

出雲地方の、古代に雨乞いの祭祀が行われていた磐座に訪れた際にできた曲です。 雨乞いの祭祀が行われていたという由緒から、請雨と名づけました。

 

07.mikumari 

飛騨の位山近くのお宮に参拝した際にできた曲です。 天から地に降り注ぐ水の螺旋を感じ、このタイトルにしました。

 

08.鳴神 

万葉集の第十一巻 2513・2514 (柿本人麻呂歌集)の二首

 ”鳴る神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ”

 ”鳴る神の 少し響みて 降らずとも 吾は留まらん 妹し留めば”

を音楽で表現した作品になります。

楽曲の中で、無音の部分が一定時間ありますが、曲の前半部分が一首目、後半部分が二首目を表現しています。

 

歌の大意ですが、

2513:雷の音がかすかに響いて、空も曇り、雨も降ってこないでしょうか。そうすれば、貴方のお帰りを引き留めることができるのに。

2514:雷の音がかすかに響いて雨が降らなくても、私はこのまま留まりましょう。貴女が引き留めるのなら。 となります。

 

09.snow crystal

雪の結晶の美しさを表した楽曲です。 前曲の雷に続き、地上における水の異なる位相を表しています。

 

10.水のふるさと

この曲は熊本の南阿蘇の白川水源でできた曲です。 数年後に近くの別の水源を訪れた際にも同じメロディーが聴こえてきて、南阿蘇の水源一帯の音楽なのだと感じ、水のふるさととその時に名付けました。

 

11.ascend

水が蒸発して空に還ってゆく様、地から天に螺旋状に上昇してゆく様を表しています。 7曲目のmikumariと合わせて、天→地、地→天の右旋左旋の2つの螺旋を表現しています。

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